10月14日の振替休日、映画『PERFECT DAYS』の舞台である東京スカイツリー周辺へ行ってきました。秋晴れの下8月に買い替えた自転車で、片道25kmほどの道のりを金木犀の香りを楽しみながら、ゆるゆるとペダルを漕いで行きました。
新荒川大橋を渡り東京都に入ると、ほどなくして赤羽水門が見えてきます。ここから隅田川に分岐していくわけですが、一旦赤羽水門を渡って隅田川左岸沿いにスカイツリーを目指します。
お天気がよくて少し汗ばむほどの陽気でしたが、さすがに9月までの灼熱感は遠のき、心地よいサイクリング日和でした。荒川の土手はいつもの通り、ランニングをする人、犬の散歩をする人、それぞれがそれぞれにゆったりとした休日を楽しんでいました。
隅田川左岸の護岸沿いの道は、都心に近づくにつれて寸断されていて、なかなか思うように進めなくなります。仕方がないので途中から方針を変更して、隅田川沿いの都道『墨堤通り』を走ることにしました。歩道付きの広い道路なので効率的に走れます。ほどなくして、最初の目的地である『桜橋』に到着しました。
桜橋
桜橋は歩行者専用橋で歩行者と自転車のみ通行できます。役所広司さん扮する平山は、この橋を渡って浅草に飲みに行ったり、姪のニコと一緒に自転車を漕いだり、この橋を往来することで世界とつながっていきます。映画の中ではとても重要な舞台になります。
物語の終盤には、ここ桜橋右岸下で、いきつけの小料理屋のママの元夫、がんが転移して余命いくばくもない三浦友和さん扮する友山と、影踏み遊びをするとても切ないシーンがあります。
平山:何にも変わんないなんて、そんなバカな話ないですよ。
友山:ないですよね。
平山さんのアパート周辺へ
隅田川左岸へ戻り、東京スカイツリーを通り過ぎたあたりに平山さんのアパートがあります。
こちらは平山さんの行きつけのコインランドリーです。トイレ掃除の時に着るつなぎなんかを洗濯するシーンで何回か登場します。
こちらの十字屋さんは、平山さんがアナログカメラで撮り溜めた木漏れ日写真のフイルムを現像してくれるお店です。普段は営業していないのかシャッターが降りたままでした。
平山さんのアパートのすぐ近くの江東天祖神社です。平山さんは朝、おばあさんが枯れ葉を掃除するほうきの音で目覚めるのですが、この神社の周辺を掃除しているんですよね。
そして平山さんのアパート前の駐車場です。映画ではハイゼットトラックのところに、トイレ掃除の仕事道具を満載した平山さんのハイゼットカーゴが停まっています。また、奥の自転車が置いてあるところに、蛍光灯が切れそうなサントリーの自販機が置いてあって、毎朝仕事前に、BOSSのカフェオレを買うのが平山さんのルーティンです。
そして、ハイゼットトラックの右側のエクストレイルが駐車しているところに、麻生祐未さん扮する妹のケイコが乗ってきた運転手付きのレクサスが停まることになります。ケイコは家出してきたニコを連れ戻しに来たわけですが、ここで平山さんが無言でケイコを静かに抱きしめ、ケイコとニコが去った後に涙を堪えて立ち尽くします。この数分間の描写が本当に素晴らしい。映画内では平山さんの人生について具体的にはほとんど語られないのですが、語られないからこそ、ここには平山さんに関するありとあらゆる、天文学的な情報が詰まっていると私は感じました。
小津安二郎と宮沢賢治
ヴィム・ヴェンダース監督が、小津安二郎の熱心なファンであることは周知の事実ですし、平山という役名も小津映画へのオマージュなのは明らかですね。とは言え、私はいつも、役所広司さん扮する平山の佇まいが、宮沢賢治の雨ニモマケズのワタシとダブって見えてしまうんです。
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
ヴェンダース監督が『雨ニモマケズ』を知っているとも思えないし、まあ、私の勝手な感想なんですが、この映画を見返すたびに、『サウイフモノニ私もなりたい』と思ってしまう衝動に抗えない私がいるのです。
最後までお読みくださりありがとうございます。
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