映画館巡礼5【キネカ大森】

キネカ大森

今回は二十数年ぶりに訪れた大森の街とキネカ大森について書きたいと思います。東京都の大田区なのでジムニーではなく京浜東北線に乗って行ってきました。オリンピック開催中の東京都ですが、別にこれといった変わったこともなく、皆さん普通に生活されている様子でした。

東京に来てはじめての勤務地

大森は私が東京に出てきて初めての勤務地になります。約10年ほど水道屋さんとして働いていました。古い記憶はそっとそのままにしておきたいという意識が働くせいか、いつでも行けるにもかかわらずなかなか足が向かなかった場所です。キネカ大森は当時から同じ場所にほぼ同じ佇まいで存在していました。ただ、当時の私はお金がなかったせいもあって、ここで映画を見た記憶は数えるほどしかありません。

大森駅

大森駅の建物は、思いのほか変化がなくて二十数年前とさほど変わらない印象でした。駅前のロータリーに京浜急行の赤青ツートンのバスが滞留している光景もそのままで、大森に来たんだなという実感が湧いてきました。

とんかつ丸一

駅から歩いてすぐのところで、山王口に抜けるガードのそばにある『味のとんかつ丸一』は、ほぼ当時のままの姿を留めて健在の様子でした(本日は定休日)。営業時間が昼と夜で2時間ぐらいづつしかなくて、席もカウンターの10席程度のお店なので、なかなか食べられなかった記憶があります。カツの厚さと量が半端なくて、城南地区では有名なお店でした。井之頭五郎さんでもないとさすがに食べきれない量かもしれません。

大森銀座(ミルパ)

丸一からすぐのところに大森銀座アーケード(ミルパ)の入り口があります。当時から続いているお店は数えるほどで、あらかたがチェーン店に置き換わっていました。さすがに時の流れの非情さを感じます。

鳥久(閉店)

アーケードから少し横に入ったところにあるテイクアウト専門の鳥弁当のお店『鳥久』ですが、張り紙を見る限り最近閉店したようです。当時は週1ペースぐらいでお世話になっていたお店なので本当に残念です。ご飯の上に鶏そぼろが乗っていて、竜田揚げも2切れほど入っていたと思います。とても美味しいお弁当でした。

愛のむきだしのロケ地

大森銀座(ミルパ)を抜けて少し行くと小さな広場が見えてきます。ここは、満島ひかり主演の映画『愛のむきだし』のロケ地です。映画を見た時にすぐにここだとわかりました。当時もそして撮影時にもあったローソンはなくなっていましたが、当時はヘビメタのお兄さんが髪を立てながら店番をしていて、職場でもちょっとした話題になっていたのを思い出します。

かつての職場

旧水道局

広場を過ぎて八幡通りを平和島方面に進むと、ほどなくして第一京浜国道にぶつかります。突き当りの取り残されたような地味な灰色の建物が、私がかつて働いていた職場です。当時は第一京浜を渡る横断歩道はなく、写真に写っている歩道橋を使っていました。この建物は数年前から使われていないようで、事業所は後ろの平和島方面に移転したようです。また、右側のマンションのところには澤田屋という料亭と第一インホテルがありましたが、取り壊されて味気ない大規模マンションになっています。

ここに勤務していたころはインターネットなどは影も形もなく、日立製の1台のワープロ専用機をみんなで奪い合って書類を書いているのどかな時代でした。80年代後半から90年代にかけてのバブル期であり、当時は当時なりに、よくわからないお立ち台の上で、意味不明なダンスを踊っているような時代の空気でした。それでも今よりははるかに未来に対して希望があったし、単純に今日より明日が良くなると思える時代でした。

西友とキネカ大森

SEIYUとキネカ大森

駅前に戻ってきて、今日の目的地であるキネカ大森です。建物自体は西友で、5F部分にキネカ大森が入る構成は当時のままですが、西友は80年代に栄華を極めたセゾングループからウォルマート資本に変わって、名前こそ同じですが全く別のお店に変わったと思います。アメリカ的な大雑把さとでも言いますか、変にカッコつけない感じが今の時代に合っているのかもしれません。かつて入居していた無印良品も、今では全く別の会社となってしまいました。

茜色に焼かれる

茜色に焼かれる

キネカ大森は当時からテアトル系の映画館としてこの場所にありました。『もぎりよ今夜もありがとう』の片桐はいりさんが時々もぎりとして出没する映画館としても有名です。本日は残念ながらいらっしゃいませんでした。

本日見る映画は石井裕也監督の『茜色に焼かれる』です。東京では今の所ここキネカ大森でしか見れません。埼玉は9月以降に深谷シネマで見られるようです。石井監督作品の公開規模はいつも小さいですが、公開規模と映画の良し悪しは関係ありません。

ネタバレになるので内容には触れませんが、例の池袋暴走事故の不条理をテーマとしつつ、尾野真千子渾身の演技で生きていくことの力強さが表現されています。こまかいところ(学校でのイジメが説明的すぎるなど)で気になるところはなくはないですが、2時間半の尺にしては中だるみもなく一気に見ることができます。そして何よりも新境地としての『笑い』の要素が心地いい。マンチェスター・バイ・ザ・シーのように、悲惨な物語であればあるほど、笑いの要素が絶対に必要なのだということを、石井監督なりに表現しているような気がします。劇場でこんなに笑ったのは『カメラを止めるな!』以来ですかね。エンディングでの永瀬正敏さんの演技は一生忘れられないです。

古い記憶のアップデート

今回は映画のおかげで、インターネットのない時代の大森からインターネットのある時代の大森へ、古い記憶のアップデートをすることができました。この先の20年後は一体どんな時代となるのでしょう。それまで生きていられるかどうかは不明ですが、その時が訪れるのを楽しみにまた日々生きていきたいと思います。

最後までお読みくださりありがとうございます。


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