千葉一夫と若泉敬

先月、川越スカラ座で「返還交渉人」という映画を見ました。映画の後には、3時間にも及ぶ伝説のティーチインが行われ、本編とサイン会も含めると約6時間の長丁場となりました。映画館も満員札止めとなり、とても幸せな時間を過ごすことができました。

監督の柳川さん、俳優陣の井浦さん、戸田さん、中島さん、そしてイベントを企画して下さった川越スカラ座の皆様、ありがとうございました。

千葉一夫という人物について

2010年の核密約問題調査による情報公開で、千葉一夫という外交官が、沖縄返還交渉で大きな役割を果たしたことが明らかになったそうです。「鬼の千葉なくして沖縄返還なし」とまで称された、気骨のある外交官だった様子が、映画全編で余すところなく描写されています。

最近の劣化した官僚のニュースを見聞きするたびに、「昔はこんな立派な人がいたのか」と、つい遠い目になってしまいます。とはいえ、私が物心ついた頃には既に沖縄は返還されていたし、私の中での沖縄といえば、南国のリゾート地というステレオタイプなイメージでしかありませんでした。私も劣化した「本土の人」の一人でした。

まずは知ることが大事

千葉一夫役の井浦新さんがティーチインの中で力説されていました。歴史の表舞台に出てこない人たちは、知ろうとしなければ素通りして終わってしまいます。また、情報公開されなければ知ることさえままならない。千葉一夫という人物について映画化されることもなかったわけです。情報公開がいかに重要かということを肌で感じた瞬間でした。

NHKアーカイブス 公開ライブラリー

せっかくなのでBSで放送されたというテレビ版も見てみたくなり、川口市のSKIPシティにある「NHKアーカイブス」という施設に行ってみました。ここでは、NHKで過去に放送された番組を無料で視聴することができます。しかし、全ての番組がアーカイブされているわけではないらしく、お目当ての「返還交渉人」を見ることはかないませんでした。

若泉敬という人物について

せっかく来たので、沖縄関係の番組を検索してみると、「密使 若泉敬 沖縄返還の代償」と題されたNHKスペシャルが見つかりました。千葉一夫氏とほぼ同じ時期に沖縄返還交渉に携わった、若泉敬という人物についてのお話です。

千葉一夫氏がオフィシャルな外交ルートでの交渉窓口だとすれば、若泉敬氏は佐藤首相の密使ということで、政治に近いポジションで、キッシンジャー氏などと交渉していたとされています。彼が「密約は沖縄返還の代償」だとして「核抜き本土並み」を唱える佐藤首相を説得しました。密約には、「有事の核の再持ち込み」と「米軍基地の永久使用権」がありました。そして、それらの条件と引換に沖縄返還が実現されるに至りました。

しかし、それは現在までに続く沖縄の米軍基地の固定化につながり、「本土並み」の謳い文句とは程遠い結果となりました。晩年の彼は自責の念で非常に苦しんだと言われています。

小指の痛みを全身の痛みと感じてほしい

彼は、沖縄の老婆が残したこの言葉を心の支えとして生きてきましたが、ついには、末期がんの病床にて自らその生命を断ったとされています。

二人の接点は?

沖縄返還という歴史的な出来事に、それぞれの立場で尽力した二人の人物。千葉一夫氏と若泉敬氏には、果たして直接的な接点はあったのだろうか? 私なりにいろいろ調べてみましたが、今の所そのような事実は確認できませんでした。しかし、少なくとも沖縄に対する情熱や真摯な思いは、二人の共通点として挙げることができるのではないかと思います。

最後までお読みくださりありがとうございます。


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