ノマドランドでTHE SMITHSに出会う

ノマドランド

今年度のアカデミー賞最有力と言われる『ノマドランド』を見てきました。主演のフランシス・マクドーマンドは、近年はアカデミー賞の常連ですね。前回はスリー・ビルボードで主演女優賞を受賞しました。本作は現代アメリカの貧困を描いた作品ですが、同様のテーマの作品として挙げられるジェニファー・ローレンス主演の『ウインターズ・ボーン』が、地縁・血縁・因習に縛られた土着型の貧困を描いていたのに対して、こちらは、タイトル通りミニバンに住みアメリカ中を転々と流浪する老人たちのノマド型の貧困を描いています。しかし、このノマドランドには貧困がテーマであるにもかかわらず、どことなく乾いた諦めのような空気感があって、ジメジメとした暗さが感じられず奇妙な後味だけが残ります。年齢的には60年代のヒッピーの成れの果てといった言い方もできるかもしれません。定住よりも流浪する自由を選ぶ、まさにアメリカ的な貧困の姿です。

THE SMITHS

物語の冒頭で、いきなりイギリスで80年代に活躍したロックバンド『THE SMITHS』の 『Home Is A Question Mark』という曲についての言及があって、現代のアメリカが舞台なのに、、と強烈な違和感(場違い感)を覚えました。しかも見覚えのない曲名だったのであとで調べてみると、THE SMITHSのボーカルだったモリッシーがソロになってから2017年に出した比較的新しい曲だということがわかりました。私もモリッシーがソロになってからしばらく聞いていましたし、横浜アリーナでの来日公演にも行ったクチなのですが、当時『水で薄めたSMITHS』といわれるほどTHE SMITHS感が薄くて、その後すっかり聞くのをやめてしまっていました。

私にとっての音楽の時間はご多分に漏れず、20歳ぐらいまでに夢中になって聴いていた80年代のUKロックで止まったままです。今もジムニーに乗れば飽きもせず80年代UKロックのプレイリストばかり聴いています。当時のUKロックはロンドン系とマンチェスター系があって、THE SMITHSはマンチェスター出身のバンドでした。今でこそマンチェスターといえば日本でもサッカーの街として有名ですが、当時は冴えないイギリスの地方都市といったイメージで、ロック好きぐらいしか注目する人はいませんでした。

そんなTHE SMITHSと30年ぶりに映画の中で出会うなんて本当に奇妙な感覚です。シャーリーズ・セロン主演の『アトミック・ブロンド』の冒頭で『NEW ORDER』の『Blue Monday』が鳴り響いた時もかなりグッときたけれど、今回は音すらかかっていないのに、古い友人に会った時のようななんとも言えない気持ちになりました。こんな思いがけない出会いに感動できるのも、映画を見る醍醐味なんだろうなとあらためて感じました。

最後までお読みくださりありがとうございます。


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