毎年ノーベル賞の季節になると話題になる村上春樹さんが原作の『ドライブ・マイ・カー』という映画を見てきました。劇場は今年の夏に数十年ぶりに訪れたキネカ大森です。西友の駐車場に無料で駐車できることがわかっていたので、今回はドライブ・マイ・ジムニーということで電車ではなくジムニーで行ってきました。車で東京都を縦断するわけですが、日曜日の昼下がりは比較的道路が空いていて、約1時間ほどで到着しました。これなら、電車で行くよりも経済的合理性があるかもしれません。
映画では西島秀俊さん演じる主人公が古いサーブ900で日本中を駆け巡ることになるわけですが、フロントガラスの立ち加減がどことなくジムニーに似ていなくもないですかね。こんな状態の良いサーブ900がよくあったなと思うほどで、やはり大事に乗られてきた古い車ってそれだけで絵になるよなーと思いながら見ていました。
オスカーに最も近い日本人
監督は濱口竜介さんで新進気鋭の若手映画監督ですね。この作品は既にカンヌ映画祭で脚本賞を受賞していますが、アカデミー賞の国際長編映画部門にもノミネートされたようです。今、オスカーに最も近い日本人映画監督ではないかと思います。過去作品で見ているのは、東出くんの不倫で話題になった『寝ても覚めても』、脚本で参加された『スパイの妻』あたりですかね。深田晃司監督や石井裕也監督とならんで好きな映画監督の一人です。
村上ワールド全開!
私にとっての村上春樹はやはり80年代に読んだ小説の世界の印象が強いです。そして本作は私の中の村上ワールドが映像に変換されて全面展開したような映画でした。普通、小説の映画化となると結構印象が違っていてがっかりしたりするものですが、本作に限っては、登場人物たちの半分浮世離れしたような存在感や、言葉などでは伝わらないことを知りながらも時にやたら饒舌になったりするところなど、小説の世界が驚くほど忠実に再現されているという印象でした。タバコやコーヒーなどの小道具の使い方も秀逸で、可能であれば『ノルウェイの森』も濱口監督にリメイクしてもらいたいと思ったくらいです。
印象的な排気音
映画ではそのタイトル通り、サーブ900の走行シーンが全編を通して描写されています。ヨーロッパのターボ車にありがちな低くくぐもった印象的な排気音とともに、サーブ900が日本中を駆け抜けるロードムービーです。そして映画の後半、その走行音が一瞬途切れて数十秒間無音となるシーンがあるのですが、この演出が素晴らしくて、まるで自分がサーブ900に乗ったまま映画館のスクリーンに吸い込まれていくような錯覚を覚えるほどでした。
ニューヨーク・タイムズ紙も絶賛
『西島秀俊、NYタイムズが選ぶ2021年最高の俳優に選出』ということで、世界中で映画の評価が高まっているようです。私は日本人というホームバイアスがあるので、デンゼル・ワシントンやホアキン・フェニックスと西島秀俊を並べて評されてもあまりピンとこなかったりするわけですが、外国人から見たら正直そんな印象なんでしょうね。世界の“ニシジマ”になる日もそう遠くはないのかもしれません。
今年のベスト
最近見た映画のほうが印象が強くなるのを差し引いても、私の中では文句なく今年ベストの映画でした。公開中の映画館もだいぶ少なくなってきていますが、村上春樹ファンや自動車好き以外の方にも文句なくオススメできる映画ですね。
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